作業療法の大きな強みは,アートとサイエンスを叡智と実践として紡いできた長い伝統といえる.にもかかわらず,アートはとかくサイエンスとは異なるものとして扱われる.なぜならば,アートとサイエンスは,異なるパラダイムや中核となる価値感,異なる実践スキルを必要とするからである.しかし,アートとサイエンスを分離することは,我々がクライエントを励まし尽くすために極めて重要といえるアートとサイエンスの相乗効果や共鳴性を過小評価する危険性に繋がる可能性がある.
一方,アートやサイエンスの厳格や重要性を損なうことなく,どのようにこれらの2つのパラダイムを一列に並べ,繋ぎ合わせるのか,そのガイドは実践においても研究においてもほとんどみられない.このプレゼンテーションでは,実証に基づく実践(Evidence-based practice: EBP)の現行のモデルは,アートとサイエンスとの間により強固なつながりを作り出すために再構築されるべきであると提言する.現行のモデルはサイエンスのパラダイムに固執しており,我々の注意をアートのパラダイムのもつ価値からそらしてしまう.
一方,知的方法であり組織的に構造化された実証に基づく実践(EBP)モデルは,アートとサイエンスの橋渡しをする理想的な土台をもたらしてくれる.そして,この概念的なモデルに対して具体的な例を用いることは,皆様との活発な討議を引き出すことになるだろう.
我々は,再構築された実証に基づく実践モデルが,どの程度アートとサイエンスのパラダイムの相乗効果を生み出すか検討したい.そして,その実践モデルに基づいた介入が,アートとサイエンスを分離させた実践と比べて,より大きな訓練効果を生むか否かを検討する.
このシンポジウムでは,アジア諸国からシンポジストをお招きして,各国のOBPの現状について15分程度で報告していただき,最後に20-30分ほどディスカッションする予定です。
1)脳卒中上肢麻痺の介入戦略
Takashi Takebayashi (Kibi International University, Japan):
脳卒中片麻痺患者への作業に焦点を当てた介入を用いた介入戦略
Pai-Chuan Huang (National Cheng Kung University, Taiwan):
脳卒中リハビリテーションにおけるロボットを活用したハイブリット型治療戦略
2) 認知症ケア
Kyoungmin Lee (Far East University, Korea) :
軽度認知症者への作業に焦点を当てた実践の役割
Hiroyuki Tanaka (Osaka Prefecture University, Japan):
重度認知症者に対する評価・介入戦略の開発
3) 学校作業療法
Seokyeon Ji (Sensory Integration towards Social and Occupational being, Korea):
学校における作業療法士と教員の連携:10年間の軌跡
Sayaka Yamaguchi (NPO habilis, Japan):
イノベーション!子供,作業療法士,地域のために
Ling-Yi Lin (National Cheng Kung University, Taiwan):
自閉症児の学校適応能力改善のための特別支援チームにおける作業療法の役割